イーサリアムとはどのような暗号通貨なのか
イーサリアムはビットコインと同じく、ブロックチェーンテクノロジーをベースとして作られた暗号通貨になります。
通貨単位は「ETH(イーサ)」、市場規模は2017年12月12日現在、ビットコインに続く2番手の通貨です。
ビットコインと同じブロックチェーンテクノロジーを元に作られているため、基本的な処理の仕組みは似ていますが、発行通貨量の上限や、ブロック生成時間、スマートコントラクト機能など、さまざまな違いもあります。
特にスマートコントラクトは注目度が高く、企業がイーサリアム技術を導入する一因ともなっている機能です。
例えば、10万円分のイーサで、ある品物を購入するという契約を行ったとします。
通常の契約なら捺印や署名を施した契約書を作成して取引に問題が起こらないようにしますが、スマートコントラクトではブロックチェーンに契約内容を記載し、条件が満たされれば自動で契約を執行してくれるのです。
つまり、上の例なら品物が渡されると同時に10万円分のイーサが支払われるということになります。
ブロックチェーンに記載された契約内容は半永久的に保存されますし、ブロックチェーンそのものに改ざん防止機能もあるため、スマートコントラクトなら信頼性の高い契約を結ぶことができるでしょう。
マイニングについては、現在はビットコインと同じ「Proof of Work(PoW)」というコンピュータの計算能力が高ければ高いほど有利な方式となっていますが、今後「Proof of Stake(PoS)」へと変更することが予定されています。
PoSとは新規コインを発行する際の振り分けを所有するコインの量で振り分ける方式のことです。
手持ちのコインが多ければ多いほど新規発行されたコインを取得することができるため、消費電力などの負担が少なく、環境に優しいマイニング方法として注目が集まっています。
通貨発行量についてもビットコインは2,100万枚が上限と決められていますが、イーサリアムでは上限が決まっていません。
ですが、これについては今後マイニング方式と同時に変更されるようですので、近々上限が設定される見通しです。
また、イーサリアムのブロック生成時間は約15秒とビットコインの約10分に比べて大幅に短いため、送金処理にかかる時間も短いという特徴もあります。
イーサリアムのセキュリティとハードフォークによる変化
イーサリアムはビットコインと同じくブロックチェーン技術を用いて取引が行われるため、基本的な安全性は高いと言えます。
しかし、通貨そのものの安全性が高くとも、オンラインウォレットなどの外部システムを利用する場合にはハッキングなどの被害に遭う可能性はゼロとは言えません。
実際にイーサリアムでもオンラインウォレットがハッキングを受け、コインが失われたり、ウォレットの利用が凍結されたりといった事例もあります。
また、イーサリアムに限らず、暗号通貨ではセキュリティの強化などを目的としたハードフォークというシステムの仕様変更が実施されることがあり、イーサリアムの場合は2017年までに3回のハードフォークが行われています。
大がかりな仕様変更となるハードフォークですが、仮想通貨の世界ではハードフォークが起こると通貨が分裂してしまうことがよくあります。
これは、ハードフォークの仕組みが原因です。
ハードフォークでは既存ブロックはそのままで新しいブロックから仕様変更するという仕組みとなっているため、古い形式のブロックと新しい形式のブロックはどちらも既存ブロックに接続することができます。
つまり、ハードフォークを実施した場合、従来のブロックチェーンに新仕様のブロックが接続されたものと、旧仕様のブロックが接続されたものの2つのブロックチェーンが生まれてしまうのです。
ですが、ハードフォークによって発生した2つのブロックチェーンについては、システム上の互換性がありません。
そのため、旧仕様のプログラムを利用するユーザーが少なければ自然と旧システムによって生成されるブロックチェーンの承認は行われにくくなります。
これにより、旧仕様の通貨が流通量はさらに減少、そして最終的には旧仕様のブロックチェーンそのものがネットワーク内からほぼ姿を消すことになるのです。
しかし、仕様変更の内容や原因次第によっては仕様変更に反対するユーザーなどによって旧仕様のシステムを利用したブロックの生成が継続され、通貨として取引され続けることがあります。
これがハードフォークによって通貨が分裂する仕組みです。
イーサリアムでも、過去にイーサリアムで発行されたトークンを用いたICOの際に大がかりなトラブルが起こってしまい、このトラブルを収拾するために、開発者が強制的にハードフォークを行いました。
仮想通貨や暗号通貨の理念では、中央集権的な仕組みは好まれないため、誰にもルール変更されないという仮想通貨の仕組みを大事にするユーザーによって古いシステムがそのまま維持され、ブロックを生成。
システム上、双方のブロックが生成され続けた場合、同じ名称では混乱が発生してしまいます。
これを防ぐために、取引所や販売所、ウォレットが旧仕様にも対応を行い、結果的にイーサリアムは分裂することになりました。
この古いイーサリアムはそのままイーサリアム・クラシックと名称を変更して現在も取引が続けられています。
分岐すると手持ちのコインはどうなる?
ハードフォークが起こるとブロックチェーンが分岐するため、手持ちのコインも分岐してしまいます。
このような場合、コインの扱いはどうなるのでしょうか?
分岐によって新しい暗号通貨が産まれる場合、取引所や販売所にコインを預けていれば、手持ちのコインと同じ量の新しいコインが配布され、2種類のコインを所有している状態となります。
そのため、どちらかのコインが淘汰され、価値が下がったとしても取引所などにコインを預けていれば利用者に損失が起こる可能性はほぼありません。
また、通貨の価値については、分裂後のハッシュパワーの割合によって変化することが多く、例えば新しい通貨のハッシュパワーが元の3割なら価値も3割に、5割なら5割の価値になることが多いようです。
ただ、オフラインウォレットなどで保管していた場合は分割したコインの配布を受けることができませんので、ハードフォークが予定されている場合には取引所にコインを一時的に預けておきましょう。
イーサリアムの将来性について
ビットコインなどの暗号通貨の人気が高まっていますが、イーサリアムにはどのような将来が予想されるのでしょうか?
2017年12月12日現在、イーサリアムは通貨だけでなく、新しい技術のプラットフォームとしての注目が集まっています。
これは、イーサリアムが通貨以外にも利用できる仕組みとなっていることが理由です。
ビットコインの場合、ブロックチェーンには取引以外の情報は書き込まれておらず、通貨として利用することしかできません。
しかし、イーサリアムのブロックチェーンには任意のデータを記述するためのブロックが用意されており、この部分に記述するデータを変更することで通貨以外の目的で利用することができるのです。
このイーサリアムを活用したシステムを開発するために、Microsoftやインテルなどの企業によるエンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(イーサリアム企業連合)が立ち上げられており、日本企業ではトヨタが参加しています。
イーサリアムのシステムを用いたブロックチェーンテクノロジーによる技術革新が進めば、よりイーサリアムに注目が集まり、将来的には通貨としての価値も上昇するかもしれません。