2017年末に240万円の最高値を更新し、1年間で10倍もの価値が高騰した仮想通貨「ビットコイン」ですがそのわずか一ヶ月弱後にはコインチェックでのハッキング事件の影響もあり、100万円台を割るという投資商品の中でも稀有な価格変動を見せました。
投資家にとっては良くも悪くも「気になる」存在の仮想通貨、投資するメリット、デメリットも株や国債などの金融商品とは大きく異なるため、大金を投じるのであれば下調べは必須です。
その中でも今回は、そのリスクについて徹底網羅していきます。
目次
リスクその1.たった2日で半額になる暴落スピード

急激な上昇があれば当然、急激な下落がある・・・分かってはいても、仮想通貨の暴落スピードは想像をはるかに超越するものがあります。
2018年の1月16日~1月17日のにかけては、二日間で仮想通貨の時価総額がおよそ半分になってしまいました。
ビットコインの下落率は、この48時間で約40%でしたが、リップルをはじめとするアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)はさらに激しい下落に見舞われました。
ビットコインは仮想通貨界の基軸通貨と呼ばれており、実際に基軸通貨のような役割を果たしています。
日本で取引をしていると、日本円で仮想通貨を購入することが一般的なため、あまり意識することはありませんが、海外ではビットコインでアルトコインを購入する場合がほとんどです。
利用者が多く価格が安定しているという点は、米ドルがスイスフンやジンバブエドル、ベネズエラボリバルより安定しているのと、理屈としては似ていると言えるでしょう。
仮想通貨に投資してない方からするとビットコインの暴騰、暴落のニュースを聞きその価格変動の大きさに驚かれるでしょうが、その裏ではさらに激しい暴騰、暴落が起きていた、という現実が実際に起こっていました。
暴落リスクへの対策
株と違いストップ安がないため、「暴落は一瞬」で起こります。
長期的に保有すると決めているならばまだしも、そうでないのであれば自身で対策を打つ必要があるでしょう。
幸い、日本の取引所でも、ビットコインに関しては指値注文が可能です。
指値注文とは、例えば現在ビットコインが100円で推移しており、90円より下がったら売りたいと思った場合に、自動的に売買を成立させてくれる機能です。
世界中で24時間動き続ける市場なため、朝起きたらマイナス20%…ということも起こりうる話で、朝起きてまずチャートをチェックし、叫ぶ様子はネットミームにもなりました。
暴落している時に売るのは良くない、という通説はあるものの、一定程度で損失にストップをかけることは株などに慣れている投資家にとっては嬉しい機能なのではないでしょうか。
リスクその2.取引所のハッキングリスク

日本では世界でも最大規模のハッキング事件が、2件起きています。
コインチェック
1月下旬、日本で仮想通貨取引所を運営するコインチェックから、アルトコインの一つであるネムがハッキングにより流出した事件は、日本に住むわれわれの記憶に新しいのではないでしょうか。
被害総額は500億円近くに上るとも言われており、幸い補償は実行されましたが、一ヶ月以上にも渡る取引所からの引き出し・送金の停止は投資家に大きなショックを与えました。
マウントゴックス
事件当時の時価に換算するとどちらも500億円前後ですが、仮想通貨の世界シェアにおける盗難規模で言えば、2014年に起きたマウントゴックス事件のほうがはるかに大きかったと言えます。
被害は75万BTC、当時のレートに換算しておよそ500億円相当ですが、事件当時の仮想通貨全てを合わせた時価総額はまだ1兆3000万円程度(2018年5月現在は約34兆円)だったため、翌年の2015年には時価総額が半分以下まで落ち込むほど、マウントゴックス事件の影響は大きなものでした。
ハッキングリスクへの対策
仮想通貨取引所へのハッキング攻撃は日本以外でも日常的に起こっており、取引所に預けている以上、リスクを軽減する対策は一個人には難しいものです。
有名な取引所は2段階認証などを用意しており、これを使うことでアカウント乗っ取りなどの個人被害はほぼ防ぐことができるとは言われています。
ただ、これと仮想通貨取引所に預けている資産が盗まれることは別次元の話です。
日本円にして約500億円相当もの仮想通貨、ネムがハッキングにより何者かに奪われたコインチェック事件直後には、そのリスクをいかにして減らすかの議論が起こりました。
そこでは、ハードウォレットと呼ばれるデバイスに仮想通貨資産を預けることが、現状の一番の最適解との意見が多く出ました。
取引所などが提供するソフトウォレットとは違い、オンラインに繋がっていないため、ハッキングリスクに遭遇する可能性は限りなく0に等しいと言えるでしょう。
コインチェック事件の際、ホットウォレット、コールドウォレットという言葉が盛んに使われましたが、ホットウォレットがオンライン、コールドウォレットがオフラインの保管場所と覚えておくと良いかもしれません。
ただ、後述する送金ミスのように、ハードウォレットはハードウォレットでハッキングとは別のリスクはあるので、使用前には注意点をよく調べ、リスクをなるべく少なくする対策は必要です。
リスクその3.儲けても多額の税金が待っている

例年のように3月にかけて行われた確定申告ですが、2017年は「億り人」という単語が使われたように、仮想通貨で大金を稼いだ投資家もその列に加わっていたことでしょう。
その納税額ですが、株やFXと違い、仮想通貨は基本的に「雑所得」に分類されると言われているため、「最高で55%もの税率」が課せられてしまいます。
さらに投資家を悩ませるのが、仮想通貨の税金計算です。
制度化が進んでいないため、何を利益として計算するのか非常に分かりづらくなっています。
取引所が提供する取引履歴をそのまま出せばいいのか…海外での取引が中心の場合どこで利益が確定されるのか…など非常に複雑になってしまっています。
税金への対策
一般的に言われる税金対策でいえば、利益を確定しないこと、つまり仮想通貨で儲かっても日本円に替えないことで、その年の課税対象にはならない、との考え方があります。
ただ昨年その考え方を実行し、年明けには4分の1になっていた…という「億り人」も多いようなので、売りたい時に売れないというのはデメリットでしょう。
別の意味での税金への対策という点では、しっかり税務署に税金を収めるためにはどうすればいいのか、という点です。
この問題への対策では、何度か職員へ聞きに行くことが有効だと言われています。
時間がかかってしまう点がデメリットではありますが、正しい知識を手に入れる他にも、しっかり税金を収める意思を示すことも、より重要だと言われています。
リスクその4.送金ミスをしたら二度と戻ってこない可能性も

銀行などで送金先を間違えたことはあるでしょうか。
手続きは煩雑で手数料もかかりますが、顧客情報も含めた銀行システムでは「組戻し手続き」と言われる機能が制度化されており、返金を受けることが可能となっています。
一方、仮想通貨では振込先を間違え、その間違えた口座アドレスが実在した場合、「二度と自らの元に戻ってくることはない」、ということを覚悟する必要があります。
ブロックチェーンと呼ばれる電子台帳に刻まれたあなたの送金処理は、その後、次の送金処理、またその次と連なっていき、その記録を巻き戻すことは出来ません。
技術的には、ハードフォーク(チェーンの分岐)という方法で、その取引が存在しなかったチェーンを正しいものと判断し使用することも出来ますが、コインチェック事件で500億円相当のネムが明らかに盗難されたものだと分かっていながら、ネム財団はハードフォークを頑なに拒みました。
個人が、100万円分の仮想通貨の送金先を間違えてしまった…と、訴えたところで誰も何もしてくれない、というのが現状です。
技術的に送金ミスのキャンセルを試みようとする仮想通貨もありますが、ブロックチェーンの基本理念には非中央集権と呼ばれる概念があります。
どこかの団体が銀行など中央集権的な振舞いで取引をキャンセルさせる、という考え方は一般的になりにくいと見て良いでしょう。
送金ミスへの対策
リスクについての説明では、仮想通貨界には、中央集権的な組織のない非中央集権を良しとする概念があると書きました。
ただ、現実にはたくさんの中央集権組織が関わっています。
代表例は、仮想通貨取引所と言えるでしょう。
仮想通貨取引所は1民間のサービス提供会社であなたは顧客です。
ですので
とは言え、ビットコイン単独でも2256種類ものアドレスを用意することが出来るため、間違えて送ったアドレスがたまたま実際に使われているアドレスだったという可能性は、限りなく低いのもまた事実です。
その場合は基本的に、送金エラーとして戻ってくるのでご安心ください。
リスク5.財務諸表などファンダメンタルズの不在

仮想通貨にも、
- 時価総額
- 取引高
- 企業との提携
- プロダクトのロードマップ
など様々な投資判断材料が存在しますが、数字的な指標という面で他の金融商品に大きく遅れをとっていることは疑いようのない事実です。
堅実に指標的裏付けを持って、ファンダメンタルズ投資をする投資家にとっては分析の難しい金融商品なのではないでしょうか。
現に、投資判断において、ファンダメンタルズ分析を徹底的にすることで知られる世界的な投資家ウォーレン・バフェットは、仮想通貨に否定的な意見を持つ代表的な一人とされています。
ファンダメンタルズがないことは仮想通貨に否定的な理由の一つに過ぎませんが、ビットコインを「殺鼠剤の二乗」と表現するほどに憎悪しているようです。
バフェット1人を例に出すのも心許なくはありますが
ファンダメンタルズ不足への対策
指標を参考に取引を行うことが難しい仮想通貨ですが、時価総額は、リスクの大小を測る際に有効な指標になりえます。
時価総額という指標では、1位のビットコイン、2位のイーサリアムの順位は安定しています。
決して値動きが小さい通貨ではありませんが、日本での知名度に比較して時価総額の小さいネムやモナコインなどと比べると、比較的安定した値動きをしていると言えます。
他にも、時価総額とある程度比例しますが、取引高も参考になり得る指標です。
リスクその6.止まらない風説の流布

2018年で海外を中心に頻繁に耳にするようになった「FUD(Fear, uncertainty and doubt : 恐怖、不安、疑念)」という言葉ですが、日本も含めほとんどの国で、仮想通貨は金融商品として見なされていないため、風説の流布が取締りの対象となっていません。
財務諸表のようなファンダメンタルズがないことは、ここでは大きなデメリットとなり、意図的な風説の流布でパニック売りを誘う手法が広く実行されました。
コインチェックのハッキング後には世界シェア1位の仮想通貨取引所である香港のバイナンスや、日本シェア1位のビットフライヤーでハッキング事件が起きたというFUDが日本でも広く伝わり、価格に影響を与えたと言われています。
ただ、風説の流布が起こりやすいという法的な特殊性はあるものの、この話題も長時間に渡るメンテナンスなど事実に基づく噂と言えなくもありません。
全く根も葉もない所からFUDを探す必要がないほど、仮想通貨市場はリスク要因で溢れているという事かもしれません。
風説の流布への対策
事実に基づくものが多い以上、非常に対策が難しいと言うのが現状です。
仮想通貨はその指標不足や実装前段階ということから、「未来への期待」で買われ、「不安で売られる」という素質を持っています。
自分が風説の流布に乗せられなくても価格は動くのですが、代表的な材料を知っておくことで、自分なりに真偽を分析することは、狼狽売りを防ぐ目的としては有効です。
ここで常に出回っている、2つの深刻な悪材料を見ていきましょう。
マウントゴックス管財人の大量売り
マウントゴックスは現在破産手続き中ですが、債権回収を主な目的として管財人に就任した小林弁護士は、2017年12月~2018年2月にかけて430億円相当のビットコインとビットコインキャッシュを売却したと発表しました。
管財人のアドレスは監視されており、残り16万BTC、1BTC=100万円に換算すると1600億円相当のビットコインが売却されるという噂は、アドレスから資金移動がある度に囁かれています。
米テザー社の取り調べ疑惑
日本ではあまり馴染みがありませんが、USDT(テザー)と呼ばれる、米ドルと連動することを目的とした仮想通貨へ対する疑念も耐えません。
日本の取引所では、日本円でビットコインを購入したり、ビットコインを日本円に交換していますが、世界ではそれにUSDTが使われています。
発行体である米テザー社は、ドルに連動することを目的としている以上、裏付けとなるの米ドル資産を持つ必要があります。
しかし、それを持っていないのではないか、という疑惑がかかっており、米商品先物取引委員などが調査に乗り出しています。
リスクその7.政府の規制方針次第な現状

整備の整っていない新興市場であることもあり、仮想通貨の将来は政府の方針に過度に依存していると言えます。
もちろん、各国政府発の仮想通貨の将来にとって有望なニュースもたくさんありますが、現状では、政府からの発表をいつも恐れなければいけない、という事態に陥っています。
2017年9月に中国政府から発表されたICO(Initial Coin Offering : 仮想通貨の発行よる資金調達手段)全面禁止の発表は9・4通告とも呼ばれており、昨年、億り人を逃した投資家の多くはここで売ってしまったと言われています。
また、今年1月に記録した記録的暴落では、日本以上に仮想通貨への関心が高いとされる韓国で、仮想通貨取引を全面禁止する方向で進めていく、というニュースが法務大臣から流れたことが、大きな要因とされています。
発言した法相の元には10万件近い解任署名が集まったと言われています。
結局、全面禁止とはなりませんでしたが、政府の方針1つがあまりにも大きな影響力を持っている一例と言えるでしょう。
日本でも、特にコインチェック事件以後は金融庁の監視が強まっており、仮想通貨の認定取引業者になるハードルが上がっていると言われています。
日本最大のウェブ企業、サイバーエージェントも認定の長期化を理由に仮想通貨取引業者からの撤退を表明しました。
コインチェックも、2018年3月期の業績が売上高626億円、営業利益537億円(営業利益率86%)という高収益企業であったにも関わらず、このままでは金融庁からの認定が受けられないことを大きな理由の一つとして、マネックス証券に36億円で全株式を譲りました。
参入の障壁はここ1年、世界中で急激に上がっており、仮想通貨の将来へ暗い影を落としています。
政府依存への対策
現在の仮想通貨界で起こっている、政府への過度な依存に対し、個人で取れる対策は今のところありません。
今後、ルール作りが進み、規制が一段落すれば依存は解消されていく方向に進むでしょう。
しかし、政府からの鶴の一声はいつの時代となっても脅威として残りそうです。
一党支配体制の国ではそれがさらに顕著です。
中国国内にあるいくつかの有名な仮想通貨取引所も封鎖されるという事態に陥ってしまったのです。
中国政府は、資本の海外逃避に警戒感を示しているとされており、現在でも安い電気代を生かしマイニング(ビットコインなど仮想通貨の採掘)は盛んなものの、取引量のシェアでは加熱する日本や韓国に対し、減少が続いています。
各国の金融監督団体は、世界的な枠組みによる規制を望んでおり、これがある程度整うまではなかなか政府依存は避けられないと言えるでしょう。
また、匿名通貨と呼ばれる高い匿名性を持つ仮想通貨は、こういった枠組みの中で特に警戒されており、実際にコインチェックは事件後、ダッシュやモネロなどのいわゆる匿名通貨の扱いを廃止しました。
リスクその8.世界中で猛威を振るうICO詐欺

2018年に入ってFacebook、Google、Twitterなどの広告プラットフォームを持つ巨大IT企業が相次いでICO(Initial Coin Offering : 仮想通貨の発行よる資金調達手段)関連の広告の出稿停止を発表しました。
背景には世界中で横行するICO詐欺があります。
仮想通貨の数は全世界で1,500、時価総額は現時点(2018年5月)で45兆円近く存在すると見られており、自社サービスでの導入など、資金調達手段としても注目が集まっています。
企業の株と同様、大手取引所に未上場の仮想通貨は上場すれば大きなリターンが見込めますが、世界中のネットワークを利用した詐欺に陥る可能のほうがはるかに高い、という事実は見逃せません。
ICO詐欺への対策
仮想通貨で圧倒的な取引高、時価総額を誇る「基軸通貨」、ビットコインでさえも値動きの激しさからハイリスク・ハイリターンな投資と呼ばれています。
上場前にプレセールで資金を集めるプロジェクトがほとんどですが、このプレセールで集まった資金を宣伝や開発など本来の目的に使ってくれる団体がどれほどいるのか、という問いに対しては首を傾げざるを得ません。
こういった詐欺被害の多発から、ウェブ広告に対し独占的なシェアを持つGoogle,FacebookがICO広告を禁止した決断は、消費者保護という観点では真っ当な判断であり、対策は打たれたといった形になります。

まとめ
いかがだったでしょうか。
そもそも仮想通貨のデメリットはそのメリットに比べて、自分で調べなければなかなか入手しにくい種類のものだと言えます。
現在、テレビ・インターネットを問わず、いくつもの仮想通貨取引所がCMを売っているように、この世の中にはメリットを宣伝して買わせたい人がいることを忘れてはいけません。
とはいえ、一生に1度あるかないかのバブル市場、それを作り上げる基となったブロックチェーン技術には、今後、様々な形で関わっていくことになるでしょう。
リスクをしっかり把握し、ブロックチェーンとその代表的プロダクトである仮想通貨と上手に付き合って行きたいものですね。